手続き記憶と鏡映描画の実施と解釈方法
目次
手続き記憶とは?
手続き記憶とは、要約すると「身体で覚える」技能といってよいかもしれません。記憶の分類に関しては、以下の記事をご参照下さい。
鏡映描画とは?
2重の星形図形の間を線に接触しないようになぞる課題です。ただし、課題を直接見ることは出来ず鏡越しに見ながら行う必要があります。
手続き記憶と鏡映描画
実際に行ってみると分かりますが、本来の鉛筆の動きと反対に鏡に映る為、意図通りに鉛筆を動かすことが難しくなります。ちょっとした混乱を「脳」が起こすような感じです。
ただ、何度か課題を繰り返していると次第に慣れてきて素早くミスなく出来るようになります。これは手続き記憶が働いていることが想定されますが、「ハノイの塔」と比べると、より運動技能の手続き記憶による側面が強いかと思います。
「運動技能」「知覚技能」「認知技能」各側面に手続き記憶の関与が示唆されています。ハノイの塔は認知技能、鏡映描画は運動技能を評価していると言われています。ただ、運動に関しても、運動企図時には認知面の働きが求められる為、各技能を明確に分けることは難しいかもしれませんね。
手続き記憶が障害されている場合、ミスの回数が減らない、課題に要する時間が減らないなどの反応が予想されます。
鏡映描画障害と日常生活障害
鏡映描画に問題がある場合、日常生活にも様々な影響が出ることが予想されます。「ハノイの塔」の記事でも説明しましたが、日常生活動作全般の効率性が低下(時間を要したり、工程が増えるなど)してしまいます。
ハノイの塔(認知技能)と比較して、鏡映描画の問題では日常生活の中でも運動技能を必要とする場面での問題が大きくなることが考えられます。
普通に考えると、日常生活で必要とされる運動技能は、過去に行ってきたことと同じ流れのはずです。その為、新たに学習する必要はありません。
ただ、脳卒中片麻痺など心身に何等かの障害を負った場合は、一見、同じような日常生活動作であったとしても、全く違う新しい動作として学習し直す(リハビリ)必要が出てきます。つまり、この場面にて手続き記憶(運動技能)障害による問題が出てくると言えます。
まとめ
- 手続き記憶は要約すると身体で覚える技能
- 鏡映描画は鏡越しに星と星の間をなぞるテスト
- 鏡映描画は手続き記憶の運動技能の側面を評価している
- 手続き記憶による運動技能のみを純粋に評価するこは難しい
- 手続き記憶が障害されると日常生活動作全般の効率性が低下
- 心身に何等かの障害を負った場合は慣れた動作でも全く新しい動作として学習(リハビリ)